でぃふぁいんどの空間

京都の大学生による戯言

パチンコと本気で向き合ってみた話1

確実に勝てるギャンブルはもはや労働。

 

 世間のパチンコに対するイメージは最悪である。コロナウィルスで自重しないいくつかのパチンコ店が晒されたのは記憶に新しい。

 

よく言われることとして、「パチンコなんて所詮はギャンブルなんだから長期的には必ず負ける」という言説がある。まさに正論だ。そうでなければパチンコ店など存続できない。しかし、同時にパチンコで生計を立てるパチプロという人種も存在する。いったいこの両者の何が違うのか。

 

一般にパチンコは釘が打ち込まれたボード上に金属球を飛ばして穴(一般にヘソと呼ばれる)に入れ、一定確率の抽選を受け、当たると玉がたくさんもらえて、それを景品(意味深)に交換できるという「遊戯」である。

 

ここで問題となるのはその釘である。建前として店は入荷したパチンコ台の釘をたたいたりして調整してはいけないことになっているが、実際は確実に店側は客に有利・不利な調整を行っている。所詮パチンコ店も一企業なのだから、そうやって利益と還元のバランスをとって運営するのである。不利な調整ばかりだと主張する人がいるがパチンコ店にもライバルがいるので全部客に不利にするとかえって競争に負けてしまうだろうから、有利な調整も行うのである。(「カイジ」に出てくる沼を思い浮かべるとわかりやすいかもしれない。一条がハンマーを持って釘をたたいていたが、あのような操作を実際のパチンコ店も行っている)

 

ヘソに入って当選する確率(現在なら、100分の1から319分の1程度)や当たると獲得できる玉数の期待値は公表されているので、単位金額あたりのヘソに入る玉数がわかれば簡単な期待値計算によりその台が長期的に勝てる台かどうかわかるはずである。

これはパチンコ打ちなら誰もが知る用語で「ボーダー」と呼ばれ、20/1kなどと表記される(この場合は1000円分の玉を打ち、20個ヘソに入れば期待値が0円になるということ)

ここまで聞くと「なんだ簡単じゃん。いい調整がされてる台をたくさん打てばいいだけかあ」と思う人もいるかもしれないが、これはそこまで簡単なことではない。理由は以下の4点である。

 

1.釘の調整を見極めるのはめちゃくちゃ難しい

パチンコ台にはたくさんの釘がついていてそれ全てがヘソへ入る確率に影響する。重要な釘に絞って見ても、それが1°上下左右に動くだけで回転数に変化を及ぼす。なんとなく眺めるだけで判別するのは非常に難しい。

 

2.自分の判断の正しさが分かりづらい

なんとか自分なりに釘を見分けて台に座ったとしても、ヘソに入る玉数はとても分散が大きい。ボーダーが20/1kの台でもある千円では12/1kだったり別の千円では30/1kも入ったりする。統計的に言えば、母平均を推測したいが分散が大きいので難しいということである。

 

3.いい台を確保するのは難しい

パチンコで生計を立てる人々は必死である。そのために朝並んだり、複数人に日当を配って複数の良い台を占拠したりする。そうなると何の組織も持たない個人がよい台に巡り合うのは非常に難しい。

 

4.なんやかんや打ちたい

実はこれが一番の負け要因だと思っている。多くの人々はわざわざパチンコ店に来て打たずに帰るという選択をしない。当たり前だがパチンコ台に触れなければ期待値は±0円である。でも打つ。特に依存症患者と高齢者は。

 

少し話が変わるが、パチンコ依存症の本質は何だろうか。ギャンブル全般に言えることとしては一瞬で手元のお金が何倍にもなるという快感だろう。依存症患者はこの感覚に支配されているので期待値的に考えて大損する台もその「感覚」だけを求めてひたすら打つ。高齢者は暇つぶしとワンチャンお金増えればいいやという刹那的な考えで打っている。この二者はお金を増やしに来ているのではなく、「パチンコを打ちに来ている」

 

面白いことだが、店内を見回して「この人上手いな」という人はだいたい台の音量・光量を最小にしてイヤホンをしている。彼らは「お金を増やしに来ている」ので台の演出なぞどうでもいいのであろう。

 

以上の事実をネットなどの情報で得たうえで、僕はパチンコを打たないつもりでパチンコ店に滞在した。日を変えて数日間観察した結果、同じ機種でも台によって釘の角度がわずかに異なっていたし、高齢者は釘など見ずに適当に打っている。大幅に負けているのに店員と談笑しだす始末である。

 

ここまでが理論と観察である。次回に続く?