でぃふぁいんどの空間

京都の大学生による戯言

パチンコで遊技するとどれだけ負けるかを"定量的に"論じる話

「遊びと捉えられるならそれで」

 最近、vtuberの団体、「にじさんじ」がサミーの提供するサービス777TOWNを用いて、パチンコ大会なる企画を行ったという噂を聞いた。

パチンコの遊戯人口は年々減少傾向であり、コロナ自粛破りをしたごく一部の店舗による印象悪化、娯楽の多様化のあおりを受けている。

 

そのなかで、若いオタク層にリーチするにじさんじがパチンコを取り上げた意味は案外大きいのではないかと思った。若者のパチンコ離れの原因はイメージ戦略の失敗という要因もあると考えるからだ。実際、公営賭博の競馬も平成20年ごろから伸び悩みが警戒されていたが、近年では参加人口・売得金額ともに増加傾向にある。有名俳優を起用した、賭博のダークなイメージを払しょくするCMなどのイメージ戦略が功を奏しているといえる。

最近では、「ウマ娘」のリリースによってその方向性に磨きがかかっているように思える。

 

このイメージ戦略の骨子は、賭博のなかの「賭博ではない部分」の強調といえるかもしれない。賭博に悪いイメージがつくのはもはや仕方ないとあきらめ、競馬なら競馬場の設備や馬や厩舎のドラマ、レースそのものに焦点を当て、馬券の購入で得られる利得という本質から目を背けさせている。

 

話を戻そう。にじさんじのパチンコ企画というのも上のイメージ戦略と同様のものを感じると危惧している。「なんとなく楽しそう」とか「推しの○○が楽しそうにしている」という情報はパチンコの賭博としての本質を見えなくする危険がある。そもそもパチンコは賭博ではないという建前があるので、賭博としての側面を押し出すことは原理的に不可能なのだが。

 

本企画で使われた777TOWNというサービスはパチンコ・パチスロ遊技機製造の大手サミーの100%子会社のサミーネットワークスが運営するものであり、サイト内での告知やパチンコ系の業界Vtuberの出演があったことから鑑みても、これがイメージ戦略であるということは揺らがないと思う。

 

前置きが長くなってしまったが、本稿ではそのようなイメージ戦略に載せられてパチンコ店に足を運ぶとどれだけの金銭を失うリスクがあるかという点に絞って話をしていく。どうしてもパチンコを打ちたくなったらまずこれを読んでそのリスクが許容できるものか考えてほしい。

 

パチンコ店が営業を存続している時点で、客から利益をとり続けていることは明確だから、何も考えずに打てば負けるのは自明である。では一歩踏み込んで何円負けるかというのを定量的に考えてみよう。

これはパチンコ店のホールコンピューター(パチンコ店の各台のデータを収集するコンピューター)を製造するダイコク電機株式会社が公表しているデータが参考になる。下記がそのPDFのリンクである。

https://www.daikoku.co.jp/dkwp/wp-content/uploads/2020/05/200528-2.pdf

同資料10ページ目の台粗利という欄を見てほしい。さらに台粗利を遊戯時間で割ると、時間粗利が得られる。時間粗利とは定義にもある通り、一時間当たりの一台あたりの店の粗利益である。すなわち、1時間あたり平均して客がいくら負けるかということである。

 

4円パチンコの時間粗利は2019年4月のデータで、1146円であるということが分かる。このようにしてみると「意外に少ない」と思う人もいるかもしれない。平均遊戯時間を掛け算した台粗利で見ても、3210円である。すなわち、平均的なパチンカーがパチンコ店に入店して4円パチンコを打つと3210円負けて帰って来るということである。

 

これは、よくパチンコを打ちに行って数万円負けて帰って来る図とは反するような気もする。

 

(このデータは全パチンコ店を平均したものなので、遊ぶ店がボッタクリ店であれば余計に金がかかるし、良心的な店であればよりお金がかからない。

また遊ぶ台も人気台なら粗利を少なくする店も多く、逆に数台程度しかない不人気台は償却のために利益率を高く設定している可能性が高い。)

 

ここまで書くとパチンコ業界の回し者かと思われてしまうので、パチンコの真の恐ろしさについて述べておくものとしよう。

 

それは、人間の心理のなかにある。パチンコとは所詮はギャンブルであるからいかに一時間当たりの期待値が-1146円だったとしても、ある日は数万円勝ったり、数万円負けたりする。

仮に数万円勝ったとしても労せずに得たカネである。すぐに使ってしまう可能性が高い。これがまずいのだと思う。この数万円勝ちに味を占めて次も打てば、今度はマイナス数万円になるかもしれない。しかし、先ほどの勝ち分は使ってしまったのでもう手元にはない。そしてマイナスのみが残る。そのマイナスを取り返そうと遊戯時間が長くなればなるほど-1146円が積みあがっていく。

数万円が動くという非日常を体感すると、1時間あたり-1146円という本質を見失ってしまうのだと思う。

 

数万円勝ったときそれを貯めて使わずに、次回の遊戯時にそのお金を使えば、確かに負け額は-1146円/時に収束していくだろう。しかし、それの何が楽しいのか。大金を手に入れたら使わずにはいられないのが人の常である。

 

これがパチンコで有り金を全部使ったり、借金をしたりする人の思考であると思う。注意したいのはこれは彼らだけの特性ではないということだ。人は無為に金を失うことに耐えられない。数万円を失うと、もう数万円失うことを覚悟してでもつぎ込みたくなる。ソシャゲのガチャなどにも応用される原理である。

 

 

ここまで読んで、まだパチンコが気になる人におすすめの遊戯方法を記載しておく。

・軍資金を決めておく

例えば、1カ月当たりいくらというのを決めて別の封筒に入れておくというやり方である。そして店に足を運ぶときはその封筒と硬貨しかもっていかなければよい。硬貨では遊戯できないからである。

こんな風にルールを決めて真面目に守れる人はそもそもパチンコ行かないのでは?

 

・1円パチンコを打つ

レートを下げるのも有効な手段である。単に演出などを楽しみたいならそれで充分である。ただ、負け額の期待値は4円パチンコと比べて純粋に4分の1にはならないことに注意。1円パチンコは必然的に勝ちにこだわる客が減るので1玉当たりに換算した利益率は高く設定されている。先ほどのデータを見ると時間粗利は370円(2020年4月)と計算できる。

つまり、1円パチンコだからといってだらだら遊べば期待値的には4円パチンコより負けられるのである。ただし、1万円単位の勝ち負けはまれなので、有り金をなくしたり、借金をするようなことにはほとんどならないと思う。

でも1円パチンコで10000発とか出ると複雑な気分になるよね。これが4円なら……とか

 

 

ここまでいろいろ書いたけど、パチンコという産業自体が嫌いなわけではない。ただ、パチンコなんかで人生左右されるなということである。この遊戯が18歳以上しかできないのは大人には判断力があるからである。このデータを見て、各自で判断してほしい。